#経営戦略
今の時代に必要とされる住宅フランチャイズ戦略 ― 工務店の未来を変えるジョンソンパートナーズの挑戦

目次
こんにちは。ジョンソンホームズ常務取締役の川田です。
日頃から地域で家づくりに取り組んでいる皆さまと、こうして経営の視点を共有できる場を持てることを嬉しく思います。
2001年に、注文住宅ブランド「インターデコハウス」のフランチャイズ展開を始めました。
そこから25年近く、ジョンソンパートナーズとしていくつものブランドを立ち上げ、広げてきたのです。
けれども今、住宅市場はかつてないほど大きく揺れています。
この先の10年、20年は、これまでの延長では立ち行かなくなるかもしれません。
地域ビルダーにとっては、生き残りをかけた厳しい戦いの時代になるでしょう。
そう考えると、自分に問いかけるようになりました。
ジョンソンパートナーズは本当に加盟店の皆さんの力になれているのか。
地域で必死に戦うビルダーにとって、必要とされる解決策を提供できているのか?
だからこそ、一度ゼロに立ち返ることにしたのです。
いま求められる住宅フランチャイズへと生まれ変わらなければならない。
これは単なる戦術の修正ではなく、戦略そのものを根本から転換する決意なのです。
2001年から始まった道のり
ジョンソンパートナーズは、その時代ごとに変わる市場環境に合わせて、提供する価値を切り替えてきました。
2000年代
バブル崩壊後、着工戸数は右肩下がり。そんな中で団塊ジュニア世代を中心に響いたのが「女性の視点」を取り入れた家づくりです。これが支持を集め、私たちの強みになりました。
2010年代
リーマンショックで所得は落ち込み、デフレも長引きました。家に求められるものが変わったのです。私たちは「規格住宅」や「ライフリッチ」といった新しい価値を打ち出し、多様なニーズに応えるためにブランドを広げていきました。
2020年代
コロナ禍を経て、住宅の性能や健康への意識は一気に高まりました。私たちも戦術レベルでの対応を重ねてきましたが、住宅価格の高騰、着工数の減少、大手ビルダーの拡大といった大きな変化には、まだ十分に応えきれていません。
振り返れば、常に変化に挑んできた歴史があります。
けれども今、向き合っているのは景気の波ではありません。
人口減少という構造そのものの問題に、建築資材の高騰が重なったことで、家を買える人が想定以上に減ってしまったのです。
これまでの延長線では越えられない、根の深い壁に直面しています。
あなたの地域でも、同じような壁を感じていませんか?
現在の住宅市場
今の市場をどう捉えるか。
課題はさまざまありますが、一番大きいのは「買える人が少なくなった」という現実です。
人口減少による市場縮小に加え、住宅価格の高騰が重なり、家を建てられる層が一気に狭まっています。
顧客はスライドしているのです。
これまで注文住宅を検討していた層は、価格が合わず、郊外や遠方に行かざるを得なくなりました。
「このあたりで、このくらいの価格なら建てられるだろう」と思っていた人たちが、実際には手が届かなくなってきているのです。
その結果、「建物のこだわりより、希望の立地で暮らしたい」という層が分譲住宅に流れ込むようになりました。
そして建売を考えていた層は、さらに中古住宅へと価格帯を下げていきます。
結果として、「予算内でいい家を建てたい」と思う人は、郊外まで行くか、土地や建物を小さくするしかありません。
市場が縮む以上に、顧客のスライドによってパイが小さくなり、その限られた市場をパワービルダーと争わなければならなくなっているのです。
さらに、集客も目に見えて減ってきており、かつてのように安定的に見込み客を集めることが難しくなっているのです。
営業の現場では、顧客を納得させるハードルが上がりました。
売れる人は成果を出し続けますが、そうでない人はさらに売れなくなる。
この差は今後ますます拡大していくでしょう。
あなたの会社でも、「営業スタッフ間の成果 の差が開いてきた」と感じる場面はないでしょうか。
この差を放置すれば、人材育成にも悪影響が出ます。
だからこそ、顧客スライドにイチ早く対応する必要があり、そこにこそ、次の時代を生き残るための成長のチャンスが眠っているのです。
地域ビルダーが取るべき3つの戦略
この市場環境の中で、地域ビルダーが取り得る戦略はいくつかあると思います。
その中で、私が特に重視しているのは、大きく以下の三つの方向性です。
1. 競合優位性のある商品を開発し、仕組みで誰でも売れる体制を整えること
まずは集客。広告の工夫だけで人が集まる時代ではありません。
お客様が「この地域で、この予算感なら、ちょうど自分たちに合う」と感じられる商品や価格帯を揃えているからこそ、反応が生まれます。
次に大事なのは契約率。お客様にしっかりと選んでもらえる仕組みを持つことです。
そして最後に、営業経験や個人のスキルに左右されず、誰でも成果を出せる体制を整えること。
属人性を排除できれば、採用難の時代でも戦えます。営業経験の浅いスタッフでも成果を出せる環境を持つことができれば、人材不足の悩みも軽減されるでしょう。
「営業は特定の人にしかできない仕事」と思われがちですが、仕組み化によってその状況は変えられるのです。
2. 顧客スライドに対応した新市場を開拓すること
分譲住宅や中古リノベーション、買取再販物件。これらは「新築が難しくなった」お客様にとっての次の選択肢になります。
「土地にこだわりたいが、予算が届かない」と諦めかけている層には、中古住宅を買ってリノベーションするという道があります。
かつてはローコストで家を建てられていた人たちも、今ではその価格帯が合わなくなり、選択肢を失いつつあります。
そうした層にとっては、中古住宅の買取再販やリノベーションが現実的な受け皿になるのです。
あなたの地域でも、実際に動いているのは中古住宅市場ではありませんか?
一方で分譲住宅は、かつて注文住宅を建てていた層のうち「立地の条件も優先したい」という人たちが流れてきています。
要は「新築の注文住宅ではもう届かない」層に対して、いかに次のステージを提示できるか。ここに新しい受注のチャンスが眠っています。
3. 今の時代に増え続ける顧客層を対象に事業を展開すること
人口全体は減っていますが、確実に増えている層もあります。高齢者、インバウンド、民泊や非住宅などです。
これらに目を向けることで、地域ビルダーに新しい成長の柱が生まれます。
「住宅会社がそこまでやるのか」と思われるかもしれませんが、だからこそ競合が少なくチャンスが広がる分野なのです。
ジョンソンパートナーズが提示する4つの成長戦略
上記の3つは地域ビルダー全般に言える方向性です。
そのうえで、ジョンソンパートナーズが加盟店の皆さまと共に取り組みたい具体的な成長戦略は4つあります。
1. 新築事業で棟数を落とさず、仕組みで成長していく戦略
棟数を落とさず成長するには、集客力と契約率で競合に勝てる力が欠かせません。
同時に、営業の属人性を減らし、誰が担当しても成果を出せる仕組みを持つことが重要です。
そうなれば採用難やスカウトによる離職にも動じない体制を築けます。
営業の属人性に悩んでいる会社は多いはずです。だからこそ、ここを一緒に変えていきたいと考えています。
2. 新しい顧客ニーズに応える戦略
資材高騰や、かつて注文住宅を考えていた層の中いた「立地を優先したい」という人々。そうした層に応えるための選択肢が、分譲住宅・中古リノベーション・買取再販です。
こうした分野を商品化・仕組み化することで、誰でも取り組みやすくなります。
「うちは新築しかやっていないから…」と思う方もいるかもしれません。ですが、新しい市場に対応することこそ、次の受注を得るための突破口になるのです。
3. 成長市場への進出戦略
高齢者、インバウンド、民泊や非住宅。これらはこれから確実に伸びる分野です。
地域によってはすでに需要が生まれています。
「住宅会社が本当に取り組むべきなのか」と迷う方もいるかもしれません。
しかし、だからこそ先に取り組んだ会社が強みを持てます。
私たちは、どこでも扱えるように商品・集客・営業・施工を仕組み化し、すぐに参入できる形で提供しています。これが私たちジョンソンパートナーズの大きな強みなのです。
4. 多角化ブランディング戦略
直営であるジョンソンホームズで取り組んでいる事業の中には、まだFC化していないものが数多くあります。これから立ち上げる新規事業も含め、順次多角化していく予定です。
ここで目指しているのは、単に事業の数を増やすことではありません。
地域に必要とされる商品やサービスを組み合わせ、「地域に根ざしたブランド」としての存在感を高めていくことです。
例えば、飲食店やインテリアショップ、あるいは婚活サービスといった事業を通じて、建築以外の場面でも地域の方々と接点を持つ。
暮らしのさまざまな場面で「この会社を知っている」「ここなら安心できる」と思っていただければ、それが住宅事業の信頼にもつながります。
つまり「地域で楽しく暮らす」という体験そのものをブランド化し、建築と生活サービスの両面から双方向でブランディングしていく。
これがジョンソンパートナーズの考える多角化ブランディング戦略です。
結論
インフレで住宅価格は上がり続け、市場そのものは縮小しています。
大手のパワービルダーは棟数を追い求め、次々と地方にも進出してきています。
私たち地域ビルダーにとっては、本当に厳しい状況です。
あなたの会社も、地域のお客様から「この会社に任せたい」と思われる存在になりたいのではないでしょうか。
そのためには、仕組み化で属人性を脱却し、多角化と仕組み化の両輪をしっかり回していく必要があります。
打つべき手ははっきりしています。変化に応え、新しく生まれた困りごとに寄り添うこと。
さらに大切なのは、住宅事業という枠を超えて地域に愛されることです。
家を建てるときだけの関係ではなく、飲食やインテリア、暮らしのサービスなどを通じて日常の中で接点を持つ。
「地域で楽しく暮らす」体験そのものを一緒につくることで、会社そのものがブランドとして認知されていきます。
これが、地域ビルダーが歩むもう一つの成長の道筋だと私は思います。
さらに、今の時代は働き方も大きく変わっています。
属人化に頼った経営は限界があります。
仕組みで成果を出せる体制をつくり、多角化と仕組み化の両輪で走ること。
それが、これからの地域ビルダーにとって欠かせない条件になるはずです。
ジョンソンホームズは、直営でその実践を積み重ねてきました。
だからこそ、私たちにしかできないフランチャイズがあると考えています。
地域で戦うビルダーの皆さんと一緒に、これからの時代にふさわしい成長の形をつくっていきたいと思います。
次回は、「新築市場でどう戦う?地域ビルダーのこれからの戦略とは」についてお話しします。
この記事を書いた人
川田 新平
株式会社ジョンソンホームズ 常務取締役
ヤマチユナイテッドグループ 常務取締役
企業ビジョンの明文化、共有・浸透を図ると同時に、社員の主体性を引き出して活かす組織風土を構築。自社を新たな成長軌道に乗せると共に、「グレートカンパニー」へと導く。